どうもこんにちは。
スルース〜探偵〜観てきました。これはやばいっす。やばいぞ。やばいしかない。(語彙力)
パンイチになるカッキーとか、ピエロの格好できゃっきゃするカッキーとか、ぞっとするほどの笑顔で歩き回る吉田鋼太郎とか、なぜかチューしそうになる2人とか、欲とか絶望とか嫉妬とか憎悪とかが、2人の実力派俳優によりリアルでスピード感たっぷりに描き出されます。
2時間20分の、疾走感たるや。
久々にメッチャ面白い舞台観た!と思いましたよ。
はいじゃ詳細。
なんか知らんがめっちゃ地方公演あるな。

もくじ
新国立劇場 小劇場の罠
本編の感想に行く前にちょっとだけこれを言わせて。
「新国立劇場 小劇場」、場所がわかりにくいよ!!!
ほとんどの人は初台駅を利用すると思うんだが、いいですか、絶対に「中央口」から出て下さい。
乗り換え案内アプリとか利用すると、「東口」から出ろって指示されるんですが、罠です。
証拠画像(Yahoo!乗り換え案内)

絶対に東口から2分で新国立劇場には着きません。
初台「中央口」ですよ!中央口!大事なことなので何度でも言う!「中央口」から出るべし!!!
(新国立劇場のHPにもそう書いてある)
まじで中央口直結だから。
ネタバレのあらすじ
さて、以下ネタバレ含むあらすじ。
だけど、この作品は、未見なら絶対にネタバレを見ないで行ったほうが面白いです。
なぜなら、逆転に次ぐ逆転に次ぐ逆転劇だからです!(まあ知ってても面白いけどね)
これから行く!って人はここでUターンして。そして観たらまた戻ってきて。
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いいね?ネタバレあらすじいくよ?
著名なミステリー作家アンドリュー(吉田鋼太郎)の元に、旅行会社を経営する若者マイロ(柿澤勇人)がやってくる。
マイロは、アンドリューの妻マーガリートと不倫をしており、アンドリューに、マーガリートと結婚したい旨を申し出る。
アンドリューは意外にも妻とマイロの結婚を快諾、だが妻は浪費家であることを告げる。
そしてマイロに、宝石盗み保険金詐欺を持ちかける。
最初は嫌がっていたマイロもなんやかんやでアンドリューの話に乗せられ、窓から強盗のふりをして再度侵入し、金庫から宝石を盗む…という偽装強盗を行うこととなった。
しかしここでアンドリューは一変、窓から入ってきたマイロに銃を突きつける。
「私がここで君を撃って殺しても警察は私を咎めない。なぜなら正当防衛だからだ」
泣いて命乞いをするマイロ。嘲笑するアンドリュー。
銃は空砲だったが、著しく尊厳を傷付けられたマイロは復讐を決意し、数日後、警察に変装してアンドリューの家を訪れる。
今度はマイロがアンドリューを追い詰める番だった。
変装を解き、姿を現し、嘲笑するマイロ。
「アンドリュー、僕は、君の愛人のテスを昨日ここで殺したよ」
激昂し、マイロを今度こそ銃で撃つアンドリュー。
そこに、マイロがあらかじめ呼んでおいた警察のサイレンが響く…
はい、以上が雑なあらすじです。
これを、超絶かわいい天使を具現化したみたいなカッキーと、日本を代表する演技派俳優かつ演出家である吉田鋼太郎とで、騙し合いに次ぐ騙し合いをするんです。
とにかく2人の俳優が、ものすごく繊細に感情をやり取りする。
面白くないわけないですね!!!そんじゃレポいくね!!
1幕の主導権、アンドリュー(吉田鋼太郎)
スルースは、2人の俳優による感情の駆け引きが魅力の舞台ですが、1幕と2幕でその主導権が入れ替わります。
1幕の主導権を握るのはアンドリュー(吉田鋼太郎)。
もう設定がおかしいんだ。だって、マイロ(柿澤勇人)は、アンドリューの妻と不倫をしていて、それをアンドリューに報告に来るところからスタートするんですよ。(普通だったらそんなことしないよね)
ここら辺に、すでにマイロのなんとなく「よく考えないお坊ちゃん感」が出てるし、その「お坊ちゃん感」が、ものすごくカッキーに合っている。
そして、アンドリューは、初めは「私は君と妻が結婚することに賛成だ」とか言って、妻をもう愛してない風のことを言っていますが、実はそうでもないんじゃないか感を徐々に出していくんです。
アンドリューの誘導
そして、アンドリューは、次第にマイロの感情を思うままに操っていきます。
アンドリューの誘導はこんな感じ。
- 妻は浪費家である
- だから君は、妻との新しい生活のためにお金が欲しいはずだ
- 私は高価な宝石を持っていて、それには保険がかけてある
- 君が盗人のふりをしてその宝石を売れば、君もそのお金が手に入るし俺も保険金が手に入る(←保険金詐欺)
- さあ盗賊のふりをしてこの家に忍び込んで来るんだ!
- これは芝居であり、君はスターだ。このピエロの衣装を着て歌うんだ!(←カッキー生着替え&超絶かわいいピエロ姿で歌とダンス披露)
- 今から外へ出て、あの窓から忍び込んでこい!
もームチャクチャな理論ですね。
ここで行われているのは、アンドリューによるマイロの、「マインドセットのチェンジ」です。
マインドセットとは、価値観や信念などから構成される、「その人の中の常識」みたいなもの。1幕は、このようにアンドリューがマイロの中の常識を巧妙に変えるよう誘導し、コントロールしていく。
これね、アンドリュー、ものすごく口がうまい営業マンみたいな感じだと思います。詐欺まがいの高額商品を売りつける人とか、きっとこういう感じですよ。
怖いね。みんな学んどこう。そして気をつけよう。
そんなアンドリューに乗せられて、マイロはピエロの格好をし、嬉々として窓から忍び込んできます。(絶対におかしいよね)
そこに、銃を突きつけるアンドリュー。
「おふざけ」だと思ってキャッキャし、高揚していたマイロは、突如として死の恐怖におののく事になります。
観客は、わかっている
でも、観ている方は、なんとなくわかっていた。
アンドリュー、コイツは一癖も二癖もある、このまま終わるはずがない、きっと何かやらかすはずだという不穏な空気を、実はずっと出していたんです。
このあたりが、吉田鋼太郎の演技力の素晴らしさですね。
だって、「絶対おかしい、なんかある」って、観客にずっと、むしろ最初からずっと、思わせているんだもん。
マイロに銃を突きつけ、「俺が今、ここで君を撃っても正当防衛だ。君は窓から忍び込んできた強盗なのだから」と急に真顔で言うアンドリュー。
この時の吉田鋼太郎の怖さと言ったら!
まじ狂気、こいつ絶対頭おかしい。そう思わせる「ヤバさ」が全身から滲み出てた。
泣いて命乞いをするマイロの額に銃を突きつけるアンドリュー、轟く銃声、もんどりうってマイロは階段を落ちて…
暗転。
(し、死んだ!?マイロ死んだ!? 2幕どうなるの!?カッキー出てこないの!?)
休憩。
2幕の主導権、マイロ
マイロ死んだんかな!?カッキーこのままずっと出てこなかったらどうしよう!?って思っているうちに2幕開始。
言い忘れましたがこの芝居はワンシチュエーションもので、セットはずっとアンドリューの部屋から動きません。
2幕ももちろんそのままスタート。
アンドリューがひとりいる部屋に、ピンポン鳴って、なんかむさ苦しいおじいちゃんみたいな男が入ってくる。
マイロだった!!!
これね、本当にしばらーくわかんなかったんですよ。
雰囲気的には、ダンス・オブ・ヴァンパイアのクコール(せむし男)と刑事コロンボを足して2で割ったぐらいのむさ苦しさです。
声もしゃがれ声。
男は自分を刑事だと名乗り、「数日前からマイロが行方不明だ」と言い出します。
と思いながらしばらく見てた私ですが、5分ぐらいして、なんか違和感に気づいた。
そうなんですよ!これ、マイロ(カッキー)の変装だったんですよ!!!!
しかし変装というにはあまりにも完璧すぎる。
だって声もぜんっぜん違うんだもの。
そして、ここから、マイロの壮絶な復讐が始まるのです…!
アンドリューを追い詰めるマイロ
むさ苦しい刑事に扮したマイロは、アンドリューを理詰めで追い詰めていきます。
1幕はどちらかというとアンドリューが口八丁でマイロを言いくるめるんですが、2幕は違う。
マイロは周到に準備した上で刑事に変装し、アンドリューの家に乗り込んで来るんです。
「3日前から行方不明のマイロという男が、BARでこの家に来るってメモを残してるんですよねぇ」
とか言いながら、
「庭に掘り返したような跡がありましたねぇ」「銃声のようなものを聞いたという近所の人がいるんですよ」「ほらここに血痕が残っている!(階段の手すりを指して)」
と徐々に証拠を出しアンドリューを追い詰めていく刑事(マイロ)。
アンドリュー「俺はやってない!銃は空砲だった!あいつは確かにこの家に来たが、帰っていったんだ!」
そう、アンドリューはマイロを精神的に追い詰めはしたが、殺してはいなかったんですね。
でも、次々とあたかもアンドリューがマイロを殺したかのような証拠を出していく刑事。
刑事「まあ…これなら、最低6年は刑務所入りでしょうなぁ」
アンドリュー「(呆然)」
1幕で、アンドリューに著しく尊厳を傷つけられたマイロは、2幕でその数日後に復讐にやってきたんです。それもものすごく用意周到に準備して。
言うなれば2幕は、
- マイロあまりにも用意周到すぎる怖い
- アンドリューもヤバいやつだったけど、マイロはもっとヤバい怖い
という、マイロのヤバさを観客が感じていく時間なんです。
正体を現すマイロ
とにかく自分はやってないのに、殺人の罪を着せられそうになって焦りまくるアンドリュー。
それを見て、笑いながらついに覆面をはぎ取り正体を現すマイロ。
マイロ「この血痕は僕が自分で塗ったんですよぉ、ウフフ」
なんと、アンドリューを追い詰めた証拠類は、全部マイロが前日にアンドリューがいない時にこの部屋に忍び込んで仕込んだものだったんです!そんな奴いる!?怖すぎナイ!?
呆然とするアンドリュー。
一瞬のおっさんずラブ、そしてヤバいやつマイロ
なんかその後も理詰めでボッコボコに詰められるアンドリュー。
ヘトヘトになるも、なぜか
アンドリュー「君が気に入ったよ…この家で一緒に暮らさないか?」
とか言い出しちゃう。なんなんだ。アンドリューお前もすげぇな。一瞬訪れるおっさんずラブ風味。(カッキーはおっさんではない、かわいい)
でもマイロはそれをもちろん断り、さらに前日にアンドリューの愛人にこの部屋に入れてもらったことを告白し、なんならヤりましたそして彼女を殺しましたアッハッハ!と大笑い。(ガチでやばい奴や)
呆然とするアンドリュー。(2回目)
エピローグ
そして怒りに満ちたアンドリューは、マイロに銃を向け、今度は本当に引き金を引くんです!!!(1幕は空砲だったけどね!)
みるみるマイロの白いシャツが赤く染まる!!!
そして、血まみれで笑いながら、マイロはこう言うんですよ。
マイロ「そろそろ俺が呼んだ警察が来るころだ」
そう、マイロが撃たれた罪できっとアンドリューは逮捕される、そこまでがマイロの復讐劇だったんです。
遠くから聞こえるサイレン。
暗転。
感想
脚本がめっちゃ良いですね。2人の間で交わされる感情のやりとりが、とてもわかりやすくできている。(この舞台はそこが分からなければ面白くない!)
キャストも良かった。実力派で、タイプの全く違う吉田鋼太郎と柿澤勇人というキャスティングが絶妙でした。
吉田鋼太郎さんはすごくて、歩いているだけで、感情のオーラが立ち上っているかのようです。久しぶりに実力派の凄みを見た。
そして最後に、カッキーの生着替えを楽しむなら上手。上手です。上手の前の方の席を選びましょう!!!(イケメンの半裸は正義だよね。)
配信&映画版
権利の関係で本編の配信はないらしいですが、トークショーとバックステージツアーが配信されます。(この2つのセットもあるよ)
2021年2月28日まで試聴が可能です。
また、映画版がありますが、現在配信はありません。DVD買うかTSUTAYAでレンタルするしかないです。
Amazonだとこのくらい。レンタル落ちだともう少し安い。
レンタルだと、オンラインレンタルサービスの「TSUTAYA DISCAS」というのがあり、借り放題の月額定額会員と単品レンタル会員の2種類の会員が選べます。
ネットで借りてポストに届くってやつです。
単品レンタル会員は登録無料、定額会員会員も初月30日は無料なので、登録してレンタルしてみるのもいいですね。
ちなみにマイロはジュード・ロウが演じているらしいよ。イケメン目の保養。
ということで、久しぶりに面白い舞台を見たというお話でした。それではまた!
